平成28年税制改正大網で企業に影響を与えるもの

2016.05.18

税金各種

 平成28年度の税制改正大綱が平成27年12月16日に公表され、改正法案が平成28年3月29日に参議院にて可決、成立しました。ここでは平成28年度税制改正のポイントを、法人課税を中心に解説していきます。

■平成28年度税制改正の概要

 平成28年度税制改正のテーマは、「日本経済の好循環を確実なものとする」です。具体的には、以下の5つの方針が柱となっています。

1. 成長志向の法人税改革等を行う
2. 消費税率引き上げに伴う低所得者への配慮として消費税の軽減税率制度を導入
3. 少子化対策や地方創生の推進等に取り組む
4. グローバルなビジネスモデルに適合した国際課税ルールの再構築を行う
5. 震災からの復興を支援するための税制上の措置を講ずる

 平成28年度税制改正は、法人税改革の一環として法人実効税率の30%未満への引き下げ、外形標準課税の拡大、これに伴う課税ベースの拡大が行われています。また、消費税率10%への引き上げが平成29年4月に実施される予定です。こちらの対策として、8%の軽減税率(一定の飲食料品・新聞)や、複数税率に対応した適格請求書等保存方式(いわゆる「インボイス制度」)が導入される予定となっています。

■平成28年度税制改正で企業に影響を与えるもの

1. 法人実効税率の引き下げ (実効税率20%台へ)
 現行の法人税率は23.9%です。しかし、平成28年度は23.4%へ、平成30年度以降は23.2%に引き下げられます。結果として法人税実効税率は、平成28年度に29.97%、平成30年度に29.74%と国際的に遜色ない水準である20%台となります。
 
2. 減価償却制度の見直し (建物附属設備、構築物の償却方法を定額法に一本化)
 平成28年4月1日以降に取得する「建物附属設備」と「構築物」が、定額法に一本化されます。これは課税ベース拡大の一環ですが、投資拡大に悪影響の少ない減価償却資産に限定したといえます。

3. 生産性向上設備投資促進税制の廃止 (適用期限で廃止)
 法人実効税率の引き下げに伴う財源の確保として、生産性向上設備投資促進税制(A類型、B類型)が適用期限(平成29年3月31日)をもって廃止されます。

4. 欠損金の繰越控除 (大法人の控除限度額65%→60%→55%→50%、繰越期間は10年へ)
 平成27年度改正では大法人の欠損金控除限度額が、平成27年度に所得金額の65%、平成29年度に50%に引き下げられることとなっていました。しかし、改革に伴う企業経営への影響を平準化する観点から、平成28年度に60%、平成29年度に55%に見直されました。また平成30年以降に生じた欠損金繰越期間が、9年から10年に延長されます。

5. 外形標準課税の税率の見直し (大法人の外形標準課税の拡大)
 平成28年度は前年に引き続き、外形標準課税における資本割と付加価値割の税率が引き上げられ、所得割の税率が引き下げられます。

6. 交際費等の損金不算入制度の延長 (2年延長)
 中小企業が支出する800万円以下の交際費等を、全額損金算入できる制度が2年間延長されます。

7. 地方創生応援税制(企業版ふるさと納税)の創設
 地方公共団体が行う地方創生事業を国が認定する仕組み(地域再生法の改正)のもとで、認定事業に対する寄付金額の一部を税額控除する制度を導入します。

8. 中小企業者等の少額減価償却資産の損金算入の特例 (2年延長)
 中小企業者等が少額減価償却資産(取得価額30万円未満の減価償却資産)を取得した場合、1事業につき年度300万円まで取得価額の全額を損金算入できる制度が、平成30年3月31日まで延長されます。なお、資本金1億円以下の法人であっても、常時使用する従業員の数が1,000人を超える法人は除外されることになりました。

9. 軽減税率の導入
 消費税率引き上げで低所得者に配慮する観点から、平成29年4月1日より「酒類・外食を除く飲食料品」及び「週2回以上発行される新聞の定期購読料」を対象に、消費税の軽減税率8%を導入することになりました。これに伴い、複数税率制度に対応した仕入税額控除方式として、インボイス制度が平成33年4月1日より導入されます。

10. クレジットカード納付制度の創設
 インターネット上で、クレジットカードによる国税の納付を可能とする制度が創設されました。

■税制改正を踏まえた対応方法

 上記の税制改正内容を踏まえて、企業に必要な対応と活用すべきポイントを解説します。

1. 減価償却方法変更(定額法)への対応
 定率法に対して定額法は初期の減価償却費が少ないため、その分税負担が増えることで設備投資計画に影響を与えます。また、今回の改正に合わせて建物附属設備と構築物の会計上の減価償却方法を変更するかどうかの検討が必要です。

2. 欠損金の控除限度額変更への対応
 欠損金の控除限度額が段階的な引き下げにより、欠損金を有する法人の利益計画に影響します。そのため、将来計画による企業価値を算定する場合には考慮する必要があります。なお、中小企業は繰越控除限度額が100%のままのため影響はありません。

3. 交際費の損金不算入制度の活用
 中小企業の800万円までの交際費の損金計上が引き続き認められるので、積極的に活用することが可能です。

4. 中小企業者等の少額減価償却資産の損金算入特例の活用
 期限が2年延長となったため、マイナンバー対応に伴う備品の購入などに活用できます。

5. クレジットカード納付の活用
 平成29年1月4日以降の国税が、クレジットカードで納付できるようになりました。これを利用して、ポイントや付帯サービスのメリットを受けられます。なお、自動車税、不動産取得税、固定資産税などの地方税は平成27年4月1日以降より既にクレジットカード納付が可能となっています。

6. 企業版ふるさと納税の活用
 地方自治体への寄付額30%を、法人住民税から税金で控除できるようになります。

■まとめ

 平成28年度税制改正は、「課税ベースを拡大しつつ税率を引き下げる」という平成27年度改正からさらに改革を進め、法人課税をより広く分かち合う構造にするという目的があります。ただ、企業が収益力を高め、前向きな国内投資や賃金引き上げに積極的に取り組むよう促す観点から、経済に悪影響の少ないものに絞って措置が講じられています。企業にどのような影響があるのか、注目すべきポイントを把握して事前に対策準備を進めましょう。

記事提供元:TRUSTAX編集部

この記事へのボイス

個人的には「消費税率引き上げに伴う低所得者への配慮として消費税の軽減税率制度を導入」でしょうか。
軽減税率の導入により実務が今までよりも複雑になるため、軽減税率導入に関係する事業者は注視しておくべきでしょう。

その他は、国税の「クレジットカード納付の活用」ですね。国税を納めてポイントが貯まる。賛否はあるとは思いますが、納税者としてはお得感がありますね。

松本唯明税理士事務所

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2016/05/18

仕事柄最も危惧するのは、やはり軽減税率の導入ですね。ここのところ予定通り導入されるかは微妙のようですが、実際に導入されると様々な面で相当の混乱が予想されます。いつ導入されても対応できるように準備を万全にしておく必要がありますね。

竹中稔会計事務所

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2016/05/19

法人税率が引き下げられていくことで、同じ所得に対する法人税の納税額は今と数年先とでは異なってきます。この差異に注目すると例えば生命保険を利用した節税対策等納税時期を将来にずらす節税対策もある一定の効果がありますね。

藤原公認会計士事務所

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2016/05/20

中小企業にとって、影響が大きい税制改正は、「消費税は別にして」・・・
(1)減価償却方法の変更
(2)交際費の損金不算入制度の継続適用
(3)中小企業者の少額減価償却資産の損金算入特例の期限延長
等かと思います。
税理士さんによく確認されて、間違えないようにお願いします。

前田勝昭公認会計士・税理士事務所

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2016/05/20

減価償却制度の見直しや軽減税率の導入は、中小零細企業の経営者の方にとっても大きな改正ではないでしょうか。建物付属設備や構築物の償却方法について、定額法が強制されると、取得後の税負担が重くなる可能性があるので中小零細企業にとっては少なくない影響があります。また軽減税率の導入は、特に食品業界の人々にとっては大変重要なテーマです。POSレジや販売管理システムの更新等、多額の設備投資が余儀なくされるかもしれません。

たかがき会計事務所

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