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2016.05.02

資金調達・融資

資金調達の方法は、数々あるが、行政などの仲介のもとに行われた「少人数私募債」の発行での資金調達の事例を紹介いたします。

企業の内容
J社は、昭和30年に各種機械部品加工業として創業した会社です。その後、自動車、産業機械、電機業界における幅広い精密部品の製造・販売を目的として株式会社宝製作所を設立し今日に至っている。社長は、協力工場55社を組織化し、大手メーカーのあらゆるニーズに対応できる生産能力を保持することで、業績の拡大を図っている。

主な業務内容は次の通り。
・各種機械チェイン部品の製造
・自動車、電気、精密機械各部品の製造
・各種ボルト・ナット類の製造
・チェイン組立

資金調達の目的
社長は、バブル崩壊後の経済低迷、中国等の低価格部品の輸入等による売上の低下にもかかわらず、事業の再構築を進めて品質を維持しながら乗り切ってきたが、受注減少に対応したリストラにより、財務体質が低下していたことが問題であると考えていた。銀行の融資姿勢は悪くはないが、長期の資金には消極的であり、手形の割引で短期の資金繰りの対応をしていた。

そのため、毎月の資金繰りを考える経営ではなく、安定した資金調達が可能となれば、経営に専念でき、上向いてきた受注の波に乗れると考えていた。そんな折に、市の商工会が受託した「まちの起業家等資金調達マッチングモデル事業」に関心を寄せ、早速応募のうえ、少人数私募債の発行を決定。事業計画を添付した「少人数私募債発行説明書」を作成し、知人・友人・従業員・主な協力工場の約45名に送付し、投資家説明会に21名の参加をいただいた。

少人数私募債の発行条件
同社が発行した少人数私募債の概要は次の通り。
(1)発行総額:2,500万円
(2)利率:3%(利払年2回)
(3)償還期間:3年一括償還
(4)一口金額:100万円
(5)引受者:11名(親族3名、従業員2名、協力工場3名、知人3名)

企業の感想
社長は、受取手形の割引という資金調達から長期固定の社債に振替ったことにより資金繰りが楽になると同時に、毎月の銀行とのやりとりなどの事務作業から解放され、本業に集中することで、少人数私募債発行時の事業計画の目標売上高を早くも2年目で達成した。
ISO9000シリーズの認証の取得も完了したことで、工場内部が整理整頓され、少人数私募債発行時と比較すると見違えるような会社へと変化した。また、工場内部に無駄がなくなり、在庫圧縮も図られている。同社の強みは協力工場55社を抱えていることである。ISO9000シリーズの認証審査途中で、協力工場のウェイトが高いため、協力工場に対する「教育プロセスマニュアル」の作成を課された。そのマニュアルの実施により、協力工場の質も一層向上し、同社の信用もさらに高まるといった効果が出ている。

また、少人数私募債の発行が新聞その他に記事として取り上げられたことで、銀行が同社を高く評価するようにもなった。毎日いろいろな銀行が訪問してくるので、その対応に時間を割かれるようになったが、借入金利やファクタリングレートが少人数私募債発行前よりもかなり有利なものとなった。利払いの際は、投資家の多くが近所に住んでいる方なので、社長自ら持参したという。その行動が投資家に信頼感を増幅させ、高利回りを実感させる機会となっているようだ。社長は、償還時には私募債の発行総額を増額し、再発行しなければ需要に対応できないかもしれないと思っている。

このように、基盤が強固で信頼もあり、経営も安定しているが、銀行との業務のやりとりや、条件があまり良くないといった場合、銀行などの金融機関の融資に頼るだけでなく、他の状況をよく知っている関係者に協力を仰ぐことも資金調達の戦略の一つであるという事例である。

記事提供元:TRUSTAX編集部

この記事へのボイス

自社の事業内容を明確に把握し将来計画を説得力を持って説明できるのであれば資金調達の方法は通常の金融機関からの借り入れだけではなく私募債の発行や場合によってはクラウドファンディングの活用も考えられます。
皆が賛同できるような将来計画をしっかりと説明できることが重要ですね。

藤原公認会計士事務所

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2016/05/02

通常、社債の発行については有価証券届出書の作成・開示など手続にかかるコストの負担が大きくなります。ただし、少人数私募債であれば、募集人数などの制限はありますが、手続に係るコストが小さくなるように制度が設計されています。
応募者は、縁故者が中心となりますので、事業計画を精緻に作成して丁寧に説明することが重要となります。また、メリットとして月々の返済が必要でなく、社債の償還まで発行金額の満額を利用できます。しかし、これは裏返すと、償還期限時には、一括して償還しなければならず、その際の資金をどうするか検討しておかなければなりません。

太鼓地会計事務所

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2016/05/04

最近はクラウドファンディングのような資金調達方法が出てきましたし、ネット環境がさらに発達することで多様性が一層深まっているように見えます。情報の共有が容易になればなるほど、資金調達の可能性が広がるような気がします。しかし、どのような手法を取ったとしても経営者は投資家に納得のいく説明をする必要があることには変わりませんので、そこは注意する必要があります。

竹中稔会計事務所

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2016/05/06

すばらしい会社ですね。
事業計画通り業績推移し、社債も順当に返せられれば言う事はありませんね。そして当初私募債にこれだけ多数の方が応募をしてくれたという事は、事業計画説明が非常に上手だった、事業内容・業績が良かったからでしょうね。当社の顧問先も1~2社実施したところがありますが、思った以上に資金が集まらず、結局銀行から借り入れをしました。残念です。

前田勝昭公認会計士・税理士事務所

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2016/05/13

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